「はれのひ」騒動について今、新成人に伝えたいこと

新成人の方が、どれだけこの記事を読んでいただけるのか、わかりませんが、この度の「はれのひ」騒動に関して、若い皆さんに是非、伝えておきたいことがあります。

ご存知のように、「はれのひ」は、2018年1月8日、成人式の日に、突如、営業を停止し、社長も行方をくらましてしまい、皆さんの一生に一度のイベントを台無しにしてしまいました。

その後、2018年1月26日に、それまで行方をくらましていた社長が、横浜市内で記者会見を行い、横浜地裁に破産申請をしたことを報告しています。
最終的負債額は10億円を超える可能性があるとのことでした。

保管されている着物のうち購入者が特定できる数十着については、29日より返却が開始されましたが、既に支払ったお金の返済は、債務超過のため事実上困難な状態です。

行方をくらましていた社長には計画倒産による詐欺の可能性も指摘され、
「反省していない」
「不誠実以外の何物でもない」
「法律で裁けない世の中はおかしい」
など辛辣な意見が相次ぎ、世間の批判が集中しました。

反面、式当日に晴れ着を着られなくなった新成人には世間の同情が集まり、被害者に急遽、振袖の貸出しやサポートを行う業者も現れ、タレントやコメンテーターが、
「こんな大人ばかりと思って欲しくない」
「大人になる日に大人が裏切ってしまい、大人として申し訳ない」
などのコメントを寄せ、リベンジ成人式の主催を企画するなど、数多くの良心的な対応もありました。

しかし、私は、今回の騒動を、「大人が裏切った」といった、情緒的な問題だけで捉えることには反対です。
そのような感想だけで今回の騒動を語ることは、偏狭で、視野が狭いようにも思えるからです。

【「はれのひ」事件は特殊なことではない】

皆さんはこの一連の騒動を、「特殊な事件」と思っていませんか。
実はこのような騒動は、決して特殊なことではありません。

今回の騒動は、「成人式当日に突然の営業停止」というインパクトの強さから、様々なメディアで大きく取り上げられ、社会問題となりました。
しかし、世間で注目されないだけで、お客や取引先を放置したまま、夜逃げをするといった倒産事例は、実は世の中、多数あります。

そして、中小企業の倒産のほとんどは、お客にはもちろん、自社の社員にすら何の告知もされず、資金もギリギリまで集められます。

また、私はかつて、金融業界での勤務経験がありますが、今回の例に限らず、多くの会社が倒産する時は、実質的な計画倒産がほとんどだったと記憶しています。
しかし、ほとんどの倒産事件は、詐欺を立証出来ませんし、仮に出来たところで、お金が戻ってくることはありません。

もちろん、このような行為が道徳的に良いはずはありませんが、このようなことは世の中、決して珍しいことではないのです。

もし、計画倒産による詐欺が立証出来なければ、「はれのひ」がやったことは、ただの「契約不履行」ということになるのです。

【契約にはリスクがある】

日本は世界でも稀に見る、「高信頼社会」なので、そのような感覚を持っていない人も多いのですが、「契約」には、常に、不履行のリスクがつきものです。

本来、代金の支払いと商品やサービスの提供が同時に行われることが、一番問題が発生しにくいのですが、現実の取引は、そうはいかない場合も多くあります。

この場合、どちらかの権利が先に行われることになり、後になった権利には、不履行のリスクは必ずついて回ります。

そして契約不履行は、刑事事件ではなく、民事事件です。
このため不履行された場合に出来ることは、法的には民事訴訟を行うことだけです。

【自分が加害者となり得ることも】

また、皆さんは、自分が被害者になることを想定しているかもしれませんが、加害者になることもあり得るのです。

例えば、貴方が必要なお金を、業者や知り合いから借入れしていたとします。
しかし、途中、何らかの事情で、やむを得ず、返済が出来なくなってしまう可能性も有ります。
そうなれば債務不履行ということになります。
中には、貴方が、返済出来なかったばかりに、連鎖倒産してしまう会社もあるかもしれません。

しかし、そんな時でも、お金を貸した側が出来ることは、貴方に返済するよう督促をすることと、民事訴訟しかないのです。

そして最終的には借りたお金の返済をしなくても、貴方は逮捕されることはありませんし、お金を返してもらえないからといって、相手に罵詈雑言を浴びせたり、乱暴な取り立てを行えば、逆に、貸した方が、逮捕されてしまうこともあります。

【メディアが集団リンチを煽ることも】

また、「今回のケースは倒産が問題でなく、逃げたのが問題だ」という意見もあるかもしれません。

しかし、私は過去の仕事柄、「夜逃げ」をしたしまった人達をよく知っていますが、根っからの悪人だった人は一人もいませんでした。

もちろん、「はれのひ」の社長がどうだったかはわかりませんし、彼に同情する気は、さらさらありません。

しかし、世の中には、万策尽きて倒産し、土壇場で逃げてしまうような、弱い人間は大勢いることは覚えておいて下さい。

そして例えそのような人間であっても、集団リンチで、罵詈雑言を浴びせて、本人や家族が生活出来ないほどに社会的に抹殺して良いわけはないのです。

私は、むしろ、「はれのひ」社長の会見で、どこかの記者が、事件には関係ない、社長の娘を引き合いに出して、「将来、自分の娘の成人式には、いったいなにを着させるつもりか」といった、わざと大衆の怒りを焚きつける質問をしていたことに対して嫌悪感を抱きました。

【様々な立場で考えてみる】

このように、この事件は、被害者の立場、加害者の立場から、様々なことが考えられます。
単なる怒りの感情や、「こんな大人ばかりと思わないで」といった情緒的な感想だけでなく、もし、自分が社長の立場であれば、果たして何が出来ただろうか、本当にそれが出来るだろうかと真剣に考えてみることが、若い皆さんの将来にきっと役立つことだと思います。

※関連記事:「はれのひ」事件から学ぶクレジット利用の優位性

投稿者プロフィール

MiyakeSeiya
MiyakeSeiya編集者・ライター
主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。

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