総量規制の功罪

平成22年6月に完全施行された改正貸金業法では、「総量規制」という年収の3分の1を超える貸出し制限が導入されていることは、ご存知の方も多いと思います。
この総量規制はそれぞれの立場によって、賛否両論、様々な評価があります。
今回は総量規制の功罪についてまとめてみました。

【総量規制の功績】

①過剰貸付け対策として確実性がある

総量規制が導入される以前のキャッシング業界は、消費者金融業者の過剰貸付けがかなり目立っていました。
(一応、金融庁のガイドラインで、過剰貸付けの判断基準として、「1業者あたり50万円又は年収の10%」とされていましたが、罰則規定もなく、複数の会社からの借入れも想定していない不完全な内容で、過剰貸付け対策としては確実性が見込めないものでした。)
特に、平成12年6月に、上限金利がそれまでの40.004%から29.2%に引き下げられた以降は、利息収益を維持するために、各消費者金融会社が競って貸付けを行った結果、多重債務者と自己破産者の増加を招くことになりました。
しかし総量規制が導入されてからは、貸金業者の過剰貸付けは、実質不可能になり、多重債務者数は改正前の6分の1以下にまで減少しました。総量規制は過剰貸付け対策としてはかなり確実性があることが証明されています。

②不良債権の発生率が低くなった

総量規制が消費者金融にもたらしたメリットとして、債権管理の安定化があります。
改正貸金業法施行以前は、顧客に融資した後も、他社がどんどん貸出しをするので、結果、多重債務状態となり、不良債権化するケースが多く見られました。
いくら自社で適正な審査を行い、慎重に貸出しをしていても、他社の貸出しで負債を増やされたらどうしようもありません。
しかし、総量規制の導入以降は、過剰貸付けに歯止めがかかり、不良債権の発生率は各段に低くなったと言われています。
上限金利が引き下がっても、営業を続けていける業者が存在するのは、不良債権の発生率が低くなったことも大きな要因です。

【総量規制の罪過】

①キャッシングが出来なくなった属性の人達がいる

総量規制が導入されたことで、貸金業者からキャッシングの利用が出来なくなってしまった属性の人もいます。
代表的なのは、自分自身の収入が全くない「専業主婦」の人達でしょう。
改正貸金業法施行以前のキャッシング業界では、無職無収入の専業主婦でも、配偶者に収入があれば、貸出しを行っていた会社が多く、各社レディースキャッシングの取り扱いにも積極的でした。しかし、改正貸金業法施行後は、総量規制によって、実質、専業主婦層への貸出しは不可能になりました。(配偶者の同意を得て、収入と負債を合算して審査するという方法もありますが一般的ではありません。)
実際は、家計のやりくりは主婦が行っているケースも多く、世帯収入で考えた場合、十分な支払能力がある専業主婦も多くいます。(実際、同じキャッシングでも貸金業法が適用されない銀行カードローンでは、無職無収入の専業主婦にも貸出しを行っています。)
また、離婚した場合でも、家事労働の貢献として専業主婦に認められる財産分与が50%と言われる中、少し配慮が不足しているとも言えます。
専業主婦の利益が損なわれないように何等か救済措置が講じられても良かったとのではないかと思われます。

②実際の返済能力はもっと多角的に考慮する必要がある

総量規制は、「年収額」における「貸金業者からの借入額」の割合を単純計算しただけのもので、その他の事情は全く考慮されていません。
現実の返済能力調査はもっと多角的な要素を考慮する必要があります。
例えば、
①主たる生計維持者はだれか
②世帯での収入はいくらか
③住宅ローンや家賃負担はあるのか
④世帯人数は何名か
⑤預貯金額はいくらか
などの要素があげられます。
単純な分、わかりやすいのですが、このような事情を全く考慮せずに、貸出し禁止とするのは、やや乱暴な気もします。

このように総量規制は良い面、悪い面がありますが、実際に、当時、社会問題化していた多重債務者の数が減少したことは事実なので、総合的には、一応、成功だったのではないでしょうか。
但し、近年は、消費者金融ではなく、総量規制の適用を受けない銀行カードローンを原因とした多重債務が問題化してきています。
総量規制のように法律で規制がかかる前に、自主規制等で健全化することを期待します。

投稿者プロフィール

ShibataMasaru
ShibataMasaru金融専門記者
自らもかつて貸金業に従事。現在は金融情報専門のライターとして精力的に情報の収集及び当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。

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