今、金融業界では、「フィンテック」というワードが大流行していますで。
「フィンテック」とは、ファイナンスとテクノロジーの2つを併せた造語で、簡単に説明すれば、「IT技術を駆使した金融サービス」の総称です。
具体的は、スマホ決済、仮想通貨、などが例にあげられます。
このような「フィンテック」サービスは、2020年の東京オリンピックに向けて、政府がキャッシュレス化を「国策」として推進していることもあり、今後、ますます充実してゆくとも言われています。
このような中、「フィンテック」をもじった、「貧テック」というワードも隠れた流行になっているのはご存知ですか?
コンテンツ
【「フィンテック」ならぬ「貧テック」とは!?】
「貧テック」とは、低所得者向けの「フィンテック」サービスのことです。
経済的余裕がない人が、その場を乗り切る少額のお金を得るために、「フィンテック」サービスを利用することの意味で使われるのが一般的です。
ちょっと言葉は悪いですが、中小消費者金融が「貧困ビジネス」と言われているのと同じように、低所得者を食いものにしているという皮肉を込めて、もじった言葉でしょう。
具体的には、「メルカリ」などのフリマアプリや「CASH」などの買い取りアプリなどが有名で、収入が少ない人が、身の回りの不要な商品を簡単に現金化出来るサービスというイメージがあります。
最近、この「貧テック」が、良くも悪くも、中小消費者金融と同じように少額の資金需要に応えるサービスとして広く認知されるようになってきています。
【「CASH」の公表データから少額資金のニーズが見える!】
先ほど、触れた、買い取りアプリの「CSAH」では、面白いデータを公表しています。
「CASH」は、2017年6月28日にスタートしましたが、あまりの反響の大きさに、わずか16時間半でサービスを一時停止した経緯があります。
当初のスキームは、スマホで撮影した商品を瞬時に査定し、査定金額に納得すれば、即、現金が振り込まれ、ユーザーは2カ月以内に商品を郵送するか、15%のキャンセル料を払ってキャンセルするかを選択するといった、「質屋」に近い内容でした。
これが、予想を超える反響で、わずか16時間半ほどで、約3.6億円が現金化され、資金も人手も追い付かなくなったことで、一時停止になったようです。
「CASH」が公表しているのはその16時間半のデータで、以下のような内容になっています。
〇実際に査定した人の約20%の人が現金化した。
〇「商品を送る」と「キャンセル」の選択は、「商品を送る」を選択した人が98%(キャンセル選択わずか2%)
〇1回あたりの引き出し金額は8,623円
〇2カ月後の取引状況は、既に商品を送った、キャンセルした人が85%。これから対応する予定の人が6%で、91%の人がまともに取引している。
このデータは、これまで消費者金融がカバーしてこなかった、2万円以下の少額資金のニーズが、潜在的にいかに多いのかを表しています。
※現在、「CASH」は、以下のような変更を行い、サービスを再開しています。
①1日で現金化する上限金額を設ける(資金ショートを回避する)
②キャンセル料を無料とする(一部、出資法逃れの脱法行為との批判を回避)
③取引期間を2カ月から2週間に変更(94%の人が1週間以内に商品発送予約をしていたため)
④買取り商品のブランドを限定(査定商品に最低1,000円の保証付き)
また、2017年10月31日には、買収によってDMM.comの子会社となっています。
【大多数は善良な人!?】
この「CASH」スキームの肝は、相手の良心に委ねて、全く与信審査をせずに、少額取引を行っていることにあります。
一見、無謀なスキームにも思えますが、2カ月後の結果では、無審査にも関わらず約91%の人が、まともに取引をしており、最終的には、95%ほどの人が正常な取引を行う見込みになっているそうです。
もちろん、一部、最初から悪意を持って、お金だけ振り込ませて、商品を送る気がない人もいるとは思いますが、このようなビジネスが成り立つもの、大多数の人がきちんとした人だったということでしょう。
【超少額取引でもビジネスは成り立つ】
また、消費者金融では、まかないきれない、2万円以下の超少額資金需要者をターゲットとしている点にも注目です。
消費者金融では、法律上、無審査融資は出来ません。
そのため、1万円融資しようが、50万円融資しようが、同じ1件として、審査には同様のコストがかかっています。
しかし、そこから得られる利益(利息収入)には、1万円と50万円では、相当の開きがあり、正直、1万円の融資では完全な赤字になってしまいます。
このように、消費者金融は、1件につき、ある程度の金額を融資しなければ成り立たないビジネスなのです。
しかし、「CASH」は、通常、消費者金融に必要な、審査周りのコストを全てカットしているので、超少額でもビジネスとして成り立っているということです。
【少額融資の可能性】
ひと昔前の消費者金融のビジネスモデルが、高金利にあぐらをかいたものであったことは否めません。
この先も法律で、金利がさらに下げられることはあっても、上がってゆくことはまずないでしょう。
特に、中小消費者金融は、生き残りをかけた厳しい状況が続くと思います。
しかし、「CASH」の公表データから、以下のような分析も出来ます。
① 小口の資金需要は確実にある
② 最初から悪意を持った人は少なく、大多数は善良に取引したいと思っている人
③ 審査、管理などの事務コストをいかに抑えるかがポイント
いずれにしても今後の小口融資の方向性を検討するうえでは、興味深いデータだと思います。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
-
自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
最新の投稿
キャッシング豆知識2021.07.07行ってきました、貸金業務取扱主任者講習
ちょっとブレイクタイム2021.05.28紀州のドン・ファンの会社の登記情報を調べてみた!
ちょっとブレイクタイム2020.09.12ドラマ「半沢直樹」に見る消費者金融行政検査の実態
ちょっとブレイクタイム2020.07.28ショッピングクレジットをわかりやすく解説