先日、自宅の書庫を整理した際に、かなり面白い本を発見したので、今回は、ちょっと趣向を変えて、ある書籍を、勝手に紹介させて頂くこととします。
本のタイトルは、「逐条解説 貸金業法(株式会社商事法務発行)」です。
私は、かつて、ある消費者金融で勤務していましたが、この本は、当時の担当行政官からの勧めもあって、付き合いで購入したものでした。
ただ、購入したのはよいものの、タイトルの堅苦しさや、小難しそうな外観から、どうしても読んでみる気にはなれず、実に今日まで、10年以上の歳月、書庫の飾りと化していたというわけであります。
しかし、改めて読んでみると、この本は見た目の堅苦しさに反して、かなり面白く、今更ながら、法改正の趣旨やねらいがよくわかる名作であることに気がつきました。
否、「あの法改正は何だったのか」ということを、本気で考えさせられる、一大思想書と言っても過言ではないでしょう。
【逐条解説貸金業法の魅力】
この本の魅力は、なんといっても「第1編 序論 さまざまな見方」に集約されています。
その中身は、中小消費者金融業者、債務者、行政官といった、三者三様の者が、それぞれの立場で、貸金業法改正への思いを独白するという、まるで芥川龍之介の「藪の中」を彷彿させるようなスタイルで、解説書としては、やや異例の構成となっています。
具体的には以下3節から構成されています。
第1節「ある中小貸金業者の独り言」
・人生をふり返り
・この国は統制経済か
・われわれとヤミ金融
第2節「ある女性多重債務者の独り言」
・借金のきっかけ
・最近の暮らし
・相談を終えて
第3節「ある行政官の独り言」
・貸金業を意識するまで
・貸金業との出会いとその後の展開
・制度改革のコンセプト
もう、各節のタイトルを見ただけでも心が惹かれないでしょうか。
その中から印象深いセンテンスをいくつか紹介します。
どこかで必要悪だという醒めた自覚が必要であり、犬やアイドルがフレンドリーなCMで広範囲に一般大衆を誘ったりすべきではなかろう。
(第1節「ある中小貸金業者の独り言」より抜粋)
自分の貧しさ、ギャンブルやブランドへの耽溺を棚にあげ、「飲みに誘われたら断れないよ」とか「競馬も国策なんだよな」とうそぶく。
果ては、こんな自分に金を貸す奴が悪い、自分は被害者だ、という思いに陥る。
(第1節「ある中小貸金業者の独り言」より抜粋)
(第1節「ある中小貸金業者の独り言」より抜粋)
でもそんなことをしていたら、息子たちがいまのように素直に健全に育ってくれたろうか、という思いと行ったりきたりしているこのごろです。
(第2節「ある女性多重債務者の独り言」より抜粋)
(第3節「ある行政官の独り言」より抜粋)
もとより、貧しいのはなんら恥ずべきではないことを併せて教える必要はあり、そうしないと成人してから、飲みにいこうと誘われて金がなければ、借金してまでつきあう人間になってしまう可能性がある。
(第3節「ある行政官の独り言」より抜粋)
なんとも含蓄のあるフレーズではないでしょうか。
「第1編」には、このような、名言が随所に散りばめられています。
【実際の立法担当が執筆】
また、この書籍の執筆は、上柳敏郎氏と大森泰人氏の共著となっています。
上柳敏郎氏は、「貸金業制度等に関する懇談会」のメンバーとして、大森泰人氏は、金融庁の信用制度参事官として、改正貸金業法の策定作業に深く関わった方々です。
実際に法律を作った人達が執筆した解説書なので、中身の信憑性は疑うべくもありません。
もともとは、上柳敏郎氏と、森雅子氏(2020年6月現在の法務大臣。最近では失言が取りざたされることが多いですが、幼少時代に家庭が高利貸に苦しめられていたこともあり、金融庁に任官時代は、金融被害を防止すべく貸金業法の策定に深く関わっていました。)との共著という企画だったようですが、森氏の県知事出馬により、企画の継続が困難になったとのことで、急遽、大森泰人氏との共著となったようです。
ちなみに、私がおすすめする「第1編」は、大森泰人氏が受け持った箇所ですが、氏の行政体験や実話をベースにモディファイしたものということです。
私自身、かつて貸金業に携わっていた者としては、それぞれの立場の意見を見事に代弁している名著だと感じています。
現在、貸金業に従事している方にとって必読の書であることはもちろんですが、「第1編」は、単純に物語として読んでも、味わいがあるので、興味がある方は、是非、ご一読をおすすめします。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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この本(「逐条解説 貸金業法」)の発行年月日はいつですか?その後の改正等は反映されていませんでしょうね。