ドラマ「半沢直樹」に見る消費者金融行政検査の実態

ドラマ「半沢直樹」の中で、度々でてくるシーンに「金融庁検査」がありますが、銀行だけでなく、消費者金融においても定期的な行政検査が実施されています。
では、実際の行政検査はどのように行われているのでしょうか。
ドラマのように検査官と攻防戦が繰り広げられているのでしょうか。

ここでは消費者金融業務経験者として、行政検査の実態を少しだけお教えしたいと思います。

では、「遠慮なくいくわよ。金融庁検査!覚悟してなさい!」

※ここに記載した内容は、あくまで筆者の消費者金融業務経験に基づく主観です。
消費者金融側の目線で、わかりやすく、かみ砕いて記載しているので、一部不適切な表現に関しては、平にご容赦くださいませ。

 

【消費者金融の監督官庁は】

消費者金融を管轄しているのは、金融庁ですが、営業所をどこに設置しているかによって、監督官庁は以下のようにわかれています。

①営業所、事務所を2以上の都道府県の区域内に設置している場合
・・各財務(支)局が監督

②営業所、事務所を1つの都道府県の区域内にのみに設置している場合
・・各都道府県知事が監督

ざっくり言ってしまえば、全国各地に営業所があるような大手業者は財務局で、営業所が1店舗しかないような中小業者は都道府県知事が監督しているというイメージです。

そして、行政検査も、財務局登録業者は各財務局が、都道府県知事登録業者は各都道府県知事が行うことになっていますが、検査の厳しさは、財務局と都道府県知事とでは、かなりの差があります。
もちろん、財務局検査が厳しくて、都道府県知事検査が比較的甘いということです。

 

【財務局検査はどんな感じなの】

●事前予告

財務局の立入検査は、概ね3年に1回の頻度で実施されています。
苦情が多発しているなど、よほど目を付けられていない限りは、「抜き打ち」ということはなく、通常は数カ月前に事前予告があります。
そして、ある程度の資料を検査の1カ月ほど前までに、「事前資料」として、提出させられ、当日はその資料を基に検査が行われることになります。

消費者金融は、この準備期間の間に、必死に資料の整理を行うわけですが、その中に、どうにも公にするのは具合の悪い資料があれば、「半沢直樹」よろしく、「疎開資料」として、どこかに隠してしまうことだってあり得ます。

●検査当日

財務局検査は、通常、3人から5人くらいの検査官(ケースによっては本庁からも役人が来る場合もある)が、2~3日かけてじっくり行います。

検査のはじめには、代表取締役、自らがお出迎えをするのが慣例です。
(「半沢直樹」では、銀行の大階段に重役総出で、立ってお出迎えするシーンは圧巻ですが、消費者金融の検査では、あそこまで大袈裟なことはありません。)

●検査のレベル

立入検査の手順やチェックすべき項目は、金融庁のマニュアルに定められていますが、実際、どの程度厳しく検査をされるのかは、その検査チームで一番、権限を持っている人(通常は主任検査官、または本庁から来ている役人)の性格によります。

「半沢直樹」の黒崎検査官のように粘着質な性格な人にあたった場合は業者としては最悪です。
どの会社だってそうですが、しつこく叩けば多少のホコリはでてくるもので、後々、大量の改善報告書を作らされることを覚悟しなければなりません。

また、前回の検査が甘かったからといって、油断するのも禁物です。
通常、役人の人事は3年ほどで入れ替わりがあるので、今回の担当が手厳しい人となることもあるからです。

ライターから一言

私も現役時代に財務局検査を経験したことがありますが、彼らは、こちらが出したお茶にさえ手をつけないといった、プロ意識の高い集団でした。

しかし、知り合いの金融マンからは、平気でお茶を飲んでいたという話も聞いたので、このあたりは、担当の役人の意識にもよるのでしょう。

●財務局検査を乗り切るには

前述しましたが、よほどその会社が行政から目を付けられている場合、検査は、ある日突然「抜き打ち」で実施されます。
この場合は、はなから向こうもその気で来ているわけなので、よほど上手く立ち回らない限り、最悪、業務停止などの行政処分を覚悟しなければなりません。

しかし、数カ月前に検査の事前予告があり、その準備に十分な時間を与えられたにもかかわらず、検査で重大な問題が発覚されるのは、正直、その消費者金融の怠慢でしかありません。

月並みですが、以下のことをしっかりと対応しておくことが重要です。

・きちんと閲覧される可能性がある資料を整理しておく。

・想定問答を作成し、シミュレーションをしておく。
(当日出たとこ勝負で、下手な嘘をつくのは超危険です。その嘘をごまかすために、嘘を噓で塗り固めることになってしまいかねません。)

 

【都道府県知事検査はどんな感じなの】

都道府県知事検査でも、建前は財務局検査と同レベルの検査を実施することが求められていますが、現実は、財務局検査に比べて、都道府県知事検査はそれほど厳しくありません。

検査対象となる消費者金融の規模があまり大きくないということもありますが、検査も数日に渡るということありません。
2~3人で来て、ほんの数時間の簡単なチェックで終了することがほとんどです。
但し、都道府県知事の検査官の中にも、黒崎タイプの人はいるので油断は禁物です。

中小消費者金融が都道府県知事検査を乗り切るためには、まずは闇金まがいのおかしな会社ではないということを理解してもらうことから始まります。

そのためには足繁く担当官庁に通い、人間的な信頼関係を築いておくといったことが重要になってくるのです。

 

【やはり怖い行政検査】

こんなところが、行政の立入検査の実態です。

えっ、事前に告知してから検査をするなんて、都合の悪いことは隠せるし、あまり意味がないんじゃないかって!
いえいえ、そんなこともありません。

定期的に監査が実施されるというだけで、消費者金融は、その都度、資料や業務の見直しを余儀なくされるので、ある程度、不正の抑止力にはなっていることは間違いありません。
(見直しを怠って、重大な問題が指摘されれば、行政処分となりかねないので、どんな消費者金融もこの時期は緊張が走りますし、必死に対応します。)

加えて、日本貸金業協会に加盟している消費者金融は、行政検査とは別に、定期的に協会の検査も実施されるので、一定のレベルに達していない、質の低い、業者は淘汰されてゆくことになるのです。

投稿者プロフィール

ShibataMasaru金融専門記者
自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。

ご質問がありましたらお気軽にどうぞ。コメントもお待ちしております。

(質問の回答にはお時間をいただく場合がございます。)