現在、国内に信用情報機関は、(株)日本信用情報機構(JICC)、(株)シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センターがありますが、キャッシング審査で最もよく利用されているのはJICCです。
もちろん、CICも貸金業法に基づく指定信用情報機関であり、キャッシング審査に利用することは出来ますが、業界では、キャッシングはJICC、ショッピングはCICを使い分けるというイメージが定着しています。
このようにJICC情報はキャッシング審査で重要視されていますが、JICC情報について熟知している人は、実は業界関係者以外ほとんどいないのではないでしょうか。
そこで当サイトでは、特集として、JICC情報について徹底解説してゆきたいと思います。
JICCについてより詳しく知りたい人は必見です。
コンテンツ
【3種類の照会方法】
JICCの照会目的は、下記3種類です。
①契約照会
新規、増額、追加、再利用などキャッシングの申込みを受けての照会が目的
②途上管理照会
契約締結後、実際の借入れが発生する前に照会することが目的
③債権管理照会
実際の借入れ発生後、顧客の返済能力調査が目的
「契約照会」は主にキャッシング審査に利用されています。
「途上管理照会」は、例えば、遠方の顧客に融資する場合、包括残高0円で契約締結して、契約書類の取り交わしを郵送で行ってから、振込みを行うといった場合などに利用することが考えられますが、実際にはほとんど利用されていません。
この2種類の照会方法は、「貸付け前の与信判断」という目的がはっきりしていますが、「債権管理照会」は、「貸付け後の債権管理のため」ということで、やや目的が漠然としています。
【リボルビング契約の定期調査】
そもそも、貸付けする前ならまだしも、貸付けした後にJICC照会をする必要があるのでしょうか。
それには、「リボルビング契約の定期調査」ということが大きくかかわってきています。
定められた限度枠内で自由に入金と出金を繰り返し利用できる契約を「リボルビング契約」と言います。
一度貸付けした後は返済するだの通常の貸付け(いわゆる「証書貸付」)が、「点の契約」なのに対し、リボルビング契約はいわば「線の契約」と言えるでしょう。
現在、消費者金融などの貸金業者には「総量規制」という年収の3分1を超える貸出しを禁止する規制が導入されています。
そして、リボルビング契約は、“融資を継続して行う”という商品の特性上、定期的に総量規制に抵触していないかを調査して、抵触している場合は、新たな貸出しが生じないように、出金停止措置を講じる必要があります。
ちなみに、貸金業法では、定期調査の対象者と頻度を以下のように定めています。
・貸付残高10万円超えが対象
・3カ月に1回以上調査
・1カ月の貸付額が5万円超の場合はその都度調査
(貸金業法の適用がない銀行カードローンでは、このような定期調査の義務は法律では定められていませんが各銀行の自主ルールに基づいて実施されています。)
債権管理照会は、まさにこの定期的な返済能力調査で活用されています。
【債権管理照会の様々な利用目的】
また、債権管理照会は、リボルビング契約定期調査以外にも様々な目的で利用されています。
その目的は、例えば、以下のようなものがあります。
①リボ契約以外の債権管理
リボルビング契約でなくても、債権管理に役立つということで、定期的にJICC照会を実施して、負債の増加具合をチェックしている会社もあります。
但し、筆者の個人的な意見では、仮に負債が増えていても、それを理由に契約解除を迫ることも出来ず、結局は静観するしかないので、やや業者の自己満足的なことのようにも感じます。
②他社の返済状況確認
また、JICC調査では、他社の返済状況も確認することが出来ます。
例えば、現在、自社が延滞中であっても、他社の支払いが滞ってなければ、たまたま忘れているだけかもしれません。
しかし、全ての支払いが滞っている場合は、要注意とされます。
他社の中に長期延滞中の債権があればなおさら事態は深刻です。
そのような債権は、債権管理担当が、すぐに、所在確認を行い、優先的に債権管理を行うことが出来ます。
また、自社が長期延滞状態であっても、直近に他社で返済があれば、訴訟などを提起すれば支払いに応じる可能性もあるので、実施する価値はあるかもしれないとも考えられます。
他社への返済状況はそのような判断基準にもなっています。
③不明先の調査
取引顧客の住所や勤務先が不明になった場合もJICC照会をすることがあります。その顧客が、他の利用業者に新住所や新勤務先の申告をしていれば、新しい情報が掲載されている可能性があります。
本来の「返済能力調査」という目的から考えれば、ちょっと微妙な感じもしますが、広義に解釈すれば返済能力調査とも言えるでしょう。
業界では、昔からこのような利用をしており、特に問題視もされていません。
④営業目的
もうひとつの裏技的な利用方法に、「営業目的」があります。これも本来の利用目的とはちょっと違う気もしますが、広い意味での返済能力調査として、業者によっては、慣習的に行われています。
顧客に増額などの営業連絡をする際に、事前に、JICC調査で、負債増加状況を確認しておけば、増額出来る見込みのある顧客だけを集中的に営業することが出来ます。
【債権回収の裏技!?】
このようにキャッシング会社は、契約中もJICCの「債権管理照会」を利用して、定期的に、契約者の調査を行っています。
しかし、キャッシング会社の中には、債権回収という観点から、知り得た情報をあえて、JICCに報告をしていない会社もあるようです。
例えば、全ての業者の支払いが長期延滞している顧客の、住所や勤務先を、ある業者が知り得たとします。
本来、その業者は、JICCに新しい住所、勤務先を報告しなければならないのですが、正直に報告をすれば、他の債権者にも、その情報が知られてしまう可能性が高く、債権回収が難しくなってしまいます。
そのため、場合によってはわざと報告しないことも裏技としてあるようです。
もちろん、これは、あくまで、“裏技としてそのような手法がある”という程度の情報なので、具体的にどの会社がそのようなことをしているということまでは申し上げられません。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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