「過剰融資」とは、返済能力を超えた金額を融資することをいいます。
返済能力を超えた融資をすれば、不良債権リスクが高まるので、「過剰融資」は、本来、キャッシング会社にとっても良いことではないはずです。
それなのになぜ、キャッシング会社は過剰融資をしてしまうのでしょうか。
どうやらキャッシングと「過剰融資」との関係は、かなり根深いものがあるようです。
バランスのよいルール作りは必須かもしれません。
【金利引き下げが過剰融資を招くことも!?】
最近では、銀行カードローンの「過剰融資」が問題視されていますが、過去に何度も過剰融資は問題になったことがありました。
近いところで言えば、平成12年6月1日に出資法の上限金利がそれまでの40.004%から29.2%に引き下がったことがきっかけで「過剰融資」が発生したことがあります。
金利が下がったため、各業者が、それまでと同等の収益を確保すべく、貸し込みに走ったためです。
筆者はその時代、まさに消費者金融で勤務していましたが、それ以前は1顧客の借入れは、多くても、せいぜい5社ほどであったのが、上下金利が29.2%に引き下がって以降は、1顧客が10社ほどから借入れしているということも珍しいことではなくなってしまいました。
自分自身で収入がない専業主婦で、既に、10社から300万円以上の借金をしているという状態の申込者にも融資をする会社も多数ありました。
この時の法改正は、本来、消費者保護が目的である金利の引き下げが、かえって「過剰融資」を招いてしまったという、なんとも皮肉な結果になってしまいました。
【市場を銀行に委ねてみたものの・・】
最近、問題となった銀行カードローンの過剰融資は、2010年6月の改正貸金法施行がきっかけです。
当時、消費者金融は、「過払い金返還問題」や、改正貸金法施行による、「上限金利の引き下げ」、「総量規制の導入」によって業務縮小を余儀なくされ、また、体力のない中小消費者金融の大半は廃業に追い込まれました。
それは、これまでの消費者ローン業界を一掃するほどの大改革になりました。
そして、消費者金融の代わりの受け皿として銀行カードローンが融資残高を伸ばし始めたのもこの時期からです。
消費者金融を淘汰して、消費者ローンの市場を「銀行」に委ねれば、これまでのような多重債務問題は防止できるという狙いがあったように思われます。
消費者金融には法改正によって、「総量規制」という年収の3分の1を超える貸出し制限が設けられましたが、銀行にはそのような法律上の貸出し制限はありません。
モラルの高い銀行にはそのような制限を設けなくても健全な自制が働くことを期待してのことでしょう。
しかし、その各銀行がこぞって収益性の高い小口融資に力を入れるようになった結果、期待していた自制は働かず、いつかの消費者金融と同様に「過剰融資」が問題視されるようになってしまいました。
その後、各銀行は自主ルールを強化し、現在、消費者ローンについては、自粛傾向にあります。
【バランスのよい介入が必要!?】
このことからも「過剰融資」は、消費者金融であれ、銀行であれ、市場の自由競争に委ねれば、必ず発生するものだということがわかります。
残念ながら、ある程度、政府が介入しなければ、問題はまた発生するように思われます。
但し、政府が介入するにも、バランスを取るのが非常に重要です。
あまりに極端な規制は、「いびつな結果」を生むことにもなりかねません。
近年、中小消費者金融を中心に、過去に自己破産や債務整理をした方に、かなり積極的に融資を行っている傾向があります。
このような人達は、過去の借金が清算されているため、総量規制に抵触していることが少ないという理由からです。
知り合いの金融関係者の話では、中小消費者金融の客層の半数ほどが、自己破産や債務整理経験者になっているようです。
このことも極端な規制が生んだ、「いびつな結果」のひとつと言えるでしょう。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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