債務整理のスタイルは、改正貸金業法施行を境に大きく変化しました。
正確に言えば、グレーゾーン時代に契約した人と改正貸金業法施行後に契約した人では、債務整理を行った時の減額幅が大きく異なることがあります。
このことを知らずに安易な債務整理を行っても、大した減額にはならないこともあるので要注意です。
今回はいまどきの債務整理事情について解説してゆきたいと思います。
【グレーゾーン時代の債務整理のカラクリ】
まずは、債務整理で減額が図れるカラクリをご存知でしょうか。
かつて、多くの貸金業者は、利息制限法と出資法の間の金利帯(いわゆる「グレーゾーン金利」)で営業を行っていました。
※参考
●利息制限法
・~10万円未満・・・年率20.00%
・10万円以上~100万円未満・・・年率18.00%
・100万円以上~・・・年率15.00%
●出資法
・昭和29年に制定当時・・年率109.5%
・昭和58年・・73.0%
・昭和61年・・54.75%
・平成3年・・40.004%
・平成12年・・29.2%
・平成22年・・20.0%になりました。
と段階的に引き下げされてきています。
利息制限法を超えた支払いであっても顧客が任意に支払った場合は、出資法利率の範囲内であれば、有効な支払いと見なされていたからです。
しかし、その任意性を証明するためには、
・契約証書を遅滞なく発行する(ATMの領収書は不可)
・入金の都度領収書を発行する
といったことが必要となるので、事実上、毎回、直接、店舗に来店して入金、出金をしている人にしか対応できないものでした。
任意性が証明出来ない限り、利息制限法を超えた支払は有効な支払いとは見なされません。
そのため、弁護士、司法書士が介入した際には、過去に遡って、利息制限法の利率で再計算されることになります。
この引き直し計算をすることによって、大幅に債務の減額を図れたり、契約が長期に渡っている場合には、逆に貸金業者に払い過ぎた金額の返還請求(過払い金返還請求)をすることも行われるようになりました。
これが、グレーゾーン時代の基本的な減額のカラクリでした。
【改正貸金業法施行後の債務整理】
しかし、平成22年6月18日に改正貸金業法によって、貸金業者の上限金利は、利息制限法と同じ基準まで引き下げられました。
このため、平成22年6月18日以降の契約については、「グレーゾーン」は存在しないことになります。
つまり、債務整理を依頼しても貸金業者に引き下げを強いる根拠はないこということになります。
このため、平成22年6月18日以降の契約については、債務整理を行っても、基本的に元金残高が圧縮されることはありません。
但し、和解額が確定すれば、その後は、基本的に将来の利息はつかなくなるので、その分だけのメリットはあります。
【安易な債務整理は要注意】
弁護士、司法書士の過払金返還の宣伝効果もあり、債務整理という手段は、広く世間に認知されるようになりました。
ひと昔前よりも債務整理という手段が身近になったのは事実です。
しかし、反面、過払金返還のカラクリをよく理解しないまま、「弁護士に頼めばお金が返ってくるらしい」というぐらいの認識で、安易な債務整理をする人が増えてきたのも事実です。
中には、弁護士に勧められるまま、望んでいないのに自己破産をさせられてしまう人もいるようです。
もちろん、返済に困って、やむを得ず債務整理という手段を取る人もいるので、全ての債務整理を否定するつもりはありませんが、安易な考えで債務整理を行うことは、デメリットの方が大きい場合もあるのでご注意下さい。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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