いわゆる「過払い金返還請求」は、「払い過ぎた利息は取り戻せます」といったテレビCMなどで世間的な認知も広がり、いまやすっかりお馴染みとなった感があります。
一時期のバブル状態は落ち着いたと言われていますが、時効が到来する前に、弁護士事務所などが完済顧客の掘り起こしもしているので、もうしばらくは、続いてゆくことが予想されます。
(ちなみに過払返還が完全に時効を迎えるのは最終取引日から10年後です。)
このため、いまだに大手消費者金融では、毎年、1千億単位での引当金を計上している状態です。
現在、大手消費者金融の多くは、銀行傘下となっているので資金力に不安はありませんが、資金力に乏しい中小業者は、この逆境にどう対応しているのでしょうか。
当サイトでは、今回、匿名を条件に、ある中小消費者金融の役員クラスの人にインタビューを試みました。
中小消費者金融の過払い返還の実態について、かなり突っ込んだ話が聞けたと思います。
尚、現在も存続している会社なので、人物、団体を特定できないよう、多少の脚色は施していますが、内容に関してはほぼそのままの形でお伝えさせて頂きます。
【中小消費者金融の過払い交渉は「瀬戸際外交」!?】
交渉はどうしても早く解決したい方が不利になると思います。
正直、うちの場合は介入通知が届いてもしばらくは放置しています。
取引履歴の開示も準備中という理由で目一杯、引き伸ばしています。
しかし、あまりやり過ぎてもいけないのでこの辺りは経験がいるところです。
ひとつ言えるのが、先方に、「ここの会社は簡単に応じてくれる」と思われたら負けだということです。
「ここの会社は、いろいろ手がかかって面倒だ」と思われないと、なかなか有利には交渉はできないと考えています。
「支払いは過払い金の2割。元金据え置きで3年分割。返済開始は1年後。」なんて提示をしたこともあります。
【判決が確定しても支払わないことも】
正直、先方が差押え出来るものも預金口座くらいしかないと思うので、結果的に先方も困ると思います。最終的には話し合いになります。
事業の継続を諦めている会社には、「無い袖は振れない!訴訟でもなんでもお好きにどうぞ!」という会社も少なくありません。
うちにしても、ある程度、したたかに交渉しなければ、本当に廃業に追い込まれかねません。
ただ、減額交渉をやり過ぎて、完全に弁護士と敵対してしまうのは、良いことではないので、ある程度落としどころを探って、なるべく和解をするようにはしています。
【中小消費者金融の対応の是非】
過払い金の支払いは、「多重債務者の家計再建を資する」ことも目的にしているので、消費者金融業界では、例え建前でも肯定せざるを得ません。
また、取引履歴の開示を拒むような行為は、不法行為とも見なされかねません。
このため大手のように、資金力も有り、業界をリードするような立場の会社とは、わりとスムーズな交渉が可能です。
しかし、資金力の乏しい中小消費者金融との交渉は、現在も簡単には進まないことは、今回のインタビューからもわかります。
ここでは、あえて中小消費者金融の対応の是非は問いません。
中には、多重債務者の家計再建というよりも、自分自身が儲けるために、徹底した営利主義で「過払い返還」をシノギにしている弁護士事務所も存在します。
Yさんも健全経営を目指してゆきたいのは山々とのことでした。
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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