2020年は改正貸金業法が施行されてから10年の節目になるメモリアルイヤーです。
それに伴い、過払い金返還請求もラストイヤーになるとか、それはデマだとか、ネット上では様々言われておりますが、実際のところはどうなのでしょうか。
今からでも「過払い金返還請求」は間に合うのでしょうか。
今回、最近の過払い金返還事情についてまとめてみました。
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【2020年過払いラストイヤーの是非】
まず、2020年が過払いのラストイヤーということの是非についてですが、結論から言えば、「ラストイヤー」というのは、正確な表現ではありません。
では、完全なるデマかと言えば、実はこれもあながちそうでもないのです。
●過払い金返還請求が出来る条件
過払い金返還請求をするには、以下の条件を満たしていなければなりません。
(改正貸金業法施行日が2020年6月18日なので、その日より前の契約であることが前提)
・最終取引から10年以内
つまり契約日が2010年6月17日以前であって、最終取引から10年以内の人でなければ、そもそも過払いは発生していないということです。
また、法律で上限金利が定められたのが、2010年6月18日ですが、大手消費者金融はそれよりも前倒しで、金利の引き下げを実施していました。
そのため、既に引き下げられた金利で取引していた人は、例え2010年6月17日以前の契約であっても過払い金は発生しません。
このように、過払い金返還請求は、過去に消費者金融と取引があれば誰でも出来るというものではなく、上記のような狭き門をくぐり抜けた人が、ようやく返還請求の権利を獲得するということなのです。
この条件を満たしていれば、もちろん、2020年以降も過払い金返還請求を行うことは可能です。
●ラストイヤーはあながちデマではない!?
では、どうして、2020年が過払い金返還請求ラストイヤーというのがあながち完全なデマではないのでしょうか。
それはラストイヤーではないにしても、上限金利の引き下げから10年という区切りが、過払い金返還請求の「終わりの始まり」になるからです。
① 発生する過払い金が少額になってくる
だいぶザックリした計算ですが、
30万円を年率29.2%の3年払いで利用した場合と、年率18.0%の3年払いで利用した際の総支払額の差は、せいぜい60,000円程度です。
仮にこれが、3社あっても、20万円程度の金額にしかなりません。
またこれを消費者金融から満額回収出来ても、ここから弁護士費用がかかります。
グレーゾーン金利で契約しても、増額をしていなかったり、取引期間が短ければ、過払い金があっても大した額にはならないのです。
また、仮に、新規契約をグレーゾーン金利で契約しても、2010年6月18日以降に追加出金した金額については、引き下げ金利の年率18.0%が適用されるので、引き直し計算の対象にはなりません。
② 大手からしか満額回収は見込めない!?
過払い金返還請求を行うとしても、先方の消費者金融が廃業していたり、倒産していたりすると、その回収は容易ではありません。(満額回収はまず無理でしょう。)
統計でも、廃業する消費者金融業者は増えています。
また、中小消費者金融も、過払い金返還に対しては、生き残りをかけて、瀬戸際外交を仕掛けてきます。
かつて当サイトで、中小消費者金融の役員にインタビューした際も、弁護士に対して、「支払いは過払い金の2割。元金据え置きで3年分割。返済開始は1年後。」なんて提示をしているようです。
この条件で飲めないなら、訴訟でも差押えでもなんでも好きにやって頂戴!といった感じのようです。
まして、廃業して債権回収だけをやっているような業者であれば、いかに弁護士といえど、まともな交渉が出来ると思えません。
いまどき、大人しく過払い金を満額返還する会社は、大手しかないのです。
(参考記事:中小消費者金融の過払い返還の実態)
【過払いバブルはもはや終了している】
このように、過払い金返還の「終わりの始まり」の時期は近づきつつあります。
統計でも、消費者金融から返還される過払い金の額は、ここ数年は、年々減少してきています。
そのような中、過払い金返還に特化して、業務をしてきた、弁護士、司法書士も最後の稼ぎ時として、完済顧客などの掘り起こしに必死です。
(あえて悪い言い方をしますが、これは「過払いバブル」の現象ではなく、最後の残りカスを絞り切るという表現が妥当かもしれません。)
とにかく少しでも過去、消費者金融と取引あった人を集客して、その人の記憶を頼りに、各業者に片っ端から、取引履歴の開示請求をかけて、返還見込みのある客を探し出すという、
やや荒っぽい営業手法です。
いずれにしても、これからの過払い金返還は、よほど特殊な例を除いて、弁護士事務所などのテレビCMで語られているような、何百万も過払金が返ってきたという景気のいい話はなかなかないでしょう。
そのうえで、もし、過払い返還請求を検討しているのであれば、冒頭で説明した条件に合致しなくなってしまう前に早めに行動しなければなりませんのでご注意下さい。
投稿者プロフィール

- 編集者・ライター
- 主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。
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