官報を利用したキャッシング審査とは

一般の人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、キャッシング会社をはじめ金融機関では、「官報」情報をチェックしている会社が多くあります。

「官報」とは、国が発行する機関紙で、法令の規定に基づく各種公告や、破産・相続等の裁判内容が掲載されている、新聞のようなものです。

キャッシング会社等の金融機関はこの官報を主に、破産、倒産、個人再生のチェックに利用しています。

ライターから一言
自己破産などの情報は、指定信用情報機関の情報に掲載されていなくても、この官報情報を検索することでわかります。

この官報情報を使って、ついには「破産者マップ」なるものが出現し、一時、騒動になったのも記憶に新しいことです。

 

【官報で自己破産などの情報を調査】

申込者や顧客が、自己破産や個人再生の手続きをとっているかどうかを、指定信用情報機関の調査でも、ある程度は判明します。

しかし、指定信用情報機関の情報は、破産や個人再生の場合、「情報の発生日から5年」で抹消されてしまいますし、破産免責確定すれば、完済情報となり、その後、5年で完済情報そのものも抹消されるので、完全に跡形もなくなってしまいます。

このように、指定信用情報機関の調査だけでは把握しきれない場合もあるので、正確に調査をするには、官報情報を利用することも必要になってきます。

但し、官報情報には、自己破産や個人再生対象者の「生年月日」は掲載されていないので、漢字氏名と住所での検索になります。

このため同姓同名が多数いる人の場合は、官報情報だけでは、本人と特定することが、なかなか困難な場合もあります。

官報情報は、本人申告、指定信用情報機関の情報と複合的に調査することで、より調査精度が上がります。

 

【インターネット官報が審査を変えた!?】

もともと官報は紙媒体でしたし、情報量も膨大なので、各企業で、データー集積して、検索するのは、大変な作業になるはずでした。

しかし、近年では、インターネットの普及により、官報情報がインターネットで検索できるサービスも開始され、情報処理としては、各段に便利になっています。

このように手軽に、官報情報が検索できるようになったおかげで、金融機関では、キャッシング審査において、申込者の官報情報を検索している会社も増えてきているようです。

このため、自己破産や個人再生をした方が、そのことを内緒にしたまま、キャッシングの審査を受けることは、昔に比べて難しくなってきています。

 

【審査で必ずしもマイナスとは限らない】

しかし、官報情報を調べられて、自己破産や個人再生の経験があることが、判明してしまうのは、必ずしもマイナス要因とは限りません。

キャッシングの審査では、指定信用情報機関の調査による、クレジットヒストリー(他社の利用履歴)が重視されています。
仮に、キャッシングの利用がなくても、ショッピングローンでは、スマートフォンの分割購入も含まれているので、何らかの利用履歴がある人が大多数です。

そのような中、信用情報が、「該当なし」で、なんら利用履歴がない人は、不審に思われ、逆に敬遠されてしまうケースもありました。(この傾向は、特に、中堅以下の消費者金融の審査で多く見られます。)

クレジットヒストリーが全くない人よりも、過去に自己破産や個人再生の経緯があった人と判明した方が、少なくとも不審に思われて否決となってしまうことはなくなります。

【官報情報は抹消されない】

官報は国の機関紙なので、金融機関に限らず、基本的には、誰でも閲覧可能です。

また、指定信用情報機関の破産情報は、5年経過すれば抹消されますが、官報情報は、原則、抹消されることはありません。

(現在、インターネットで検索可能な、独立行政法人国立印刷局の「官報情報検索サービス」でも、昭和22年5月3日から、直近までの官報情報が検索可能になっています。)

つまり、その気になれば、誰でも、官報情報を調査することが出来る状況ということです。

しかし、興味本位でわざわざ官報を見るような人もなかなかいないと思うので、一般の人に自己破産や個人再生の事実が知れ渡るということはあまりないでしょう。

 

【ついに「破産者マップ」が登場!!】

※追記(2019年3月19日)

●「破産者マップ」なるものが突如出現!

最近、ネット上に「破産者マップ」なるサイトが突如出現し、賛否両論巻き起こる騒ぎになっていたことはご存知でしょうか。

この「破産者マップ」とは、「官報」に掲載されている自己破産者の住所データを、グーグルマップ上に表示させ、自己破産をした人の住所、氏名、裁判所名、事件番号などが確認出来るという、かなりトンデモの代物ものでした。

ネット上では、「プライバシーの侵害」であるとか、「いじめや差別を引き起しかねない」という否定的な意見が多数ありましたが、サイト運営者は、「もともと官報は、誰でも自由に閲覧可能なものであり、そこに記載されている情報をネット上で可視化することの何が問題なのか」という主張でした。

また、サイトでは、削除要請も可能としていましたが、削除するためには、削除対象者の氏名、生年月日、削除理由、破産後の生活状況、身分証明書の提出など、かなりの情報を運営者に提供する内容になっていたようです。

これに対して、複数の弁護士が、損害賠償の対象となるという認識を示し、集団訴訟の話まで持ち上がってましたが、その後、運営者から、「多くの方にご迷惑をかけた」として、サイトは閉鎖されました。

(このサイトは、2019年3月17日までは閲覧可能でしたが、2019年3月18日午後からは、地図にエラー表示がされるようになり、同日21時時点では、サイトは削除されていました。政府の個人情報保護委員会からサイトを閉鎖するように行政指導があったとのことです。)

●情報処理の進化がもたらした弊害

筆者も、今回の官報情報のグループマップへの加工は、いくら、官報が誰でも閲覧可能な情報であったとしても、やりすぎだという考えです。

そのようなマップを作成することは、一般の人にとって、何の役にも立ちませんし、むしろ、悪意を感じるからです。
なので、今回、削除に追い込まれたのはやむを得ないとは思います。

しかし、運営者が主張していたように、官報情報は、その気になれば誰でも閲覧可能なものであることは間違いありません。

これまでの官報は、紙媒体が中心で、かつ情報量も膨大なため、興味本位で簡単に調べきれるものではありませんでした。
そのため、わざわざ見るような人がいなかったというだけです。

しかし、インターネット官報の登場により、現在は、ネットで自己破産者を検索するのは比較的簡単に出来るようになりました。
そして、ついには、その情報をグーグルマップに加工までする人が出てきたのは、むしろ当然のなりゆきだったのかもしれません。

今回の騒動では、情報処理の進化によって、これまで膨大な量の書面に埋もれていたネガティブな情報が白日のもとに晒されてしまうリスクがあることが明らかになりました。

今後も、第二、第三の「破産者マップ」が出てこないとも限りませんし、ネット上での情報処理には一定のルール作りは必要なのかもしれません。

投稿者プロフィール

ShibataMasaru
ShibataMasaru金融専門記者
自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。

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