全国銀行個人信用情報センターの貸付自粛制度が開始!

【カジノ法案でギャンブル依存症対策が喫緊の課題に!】

カジノ解禁を含む、統合型リゾート(IR)実施法案(いわゆる「カジノ法案」)が、2018年7月20日の参院本会議で可決されたことは記憶に新しいところです。

この法案をめぐる議論の中でも、「ギャンブル依存症対策」を優先すべきという声も少なくなく、喫緊の課題となっています。

ギャンブルの資金を金融機関から借入れをする可能性があるとも言われている中、業界の対応はどうなっているのでしょうか。

 

ライターから一言
カードローンには、昔から、パチンコなどギャンブルでの利用者は、一定数います。
日本貸金業協会のアンケートでは、確か、申込者全体の5.4%ほどだそうです。

でも、個人的には、実際はもっと多いのではないかと思っています。
正直にギャンブル資金で借りたと申告していない人もいますからね。

 

【KSCの貸付自粛制度が開始!】

2017年3月、ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議の「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」において、
「銀行の個人向け融資を通じ、ギャンブル等依存症患者がギャンブル等の資金を借り入れる可能性がある」
とされたことを受けて、全国銀行個人信用情報センター(KSC)において、2019年3月29日より、「貸付自粛制度」を開始することになりました。

「貸付自粛制度」は、これまで、日本貸金業協会の制度として存在していましたが、今回、KSCでも新たに貸付制度を設けるということです。

KSCの貸付自粛制度は、日本貸金業協会とも連携をとり、他信用情報機関の、㈱日本信用情報機構(JICC)、㈱シー・アイ・シー(CIC)にも登録されることになります。

中身は、おおよそ、日本貸金業協会のそれと同じで、

・登録期間は申告日より5年間
・申告は原則本人のみ(行方不明時や、法定代理人はOK)

となっています。

※追記(2019年4月)

かたや日本貸金業協会では、ギャンブル等依存症対策の一環として、2018年4月から、ギャンブル等依存症対策を理由とする申告を自粛の対象項目に追加し、制度の拡充を図りました。

その結果、2018年度上半期の日本貸金業協会の貸付自粛の登録件数は、1,265件と、2017年度を上回るペースで増加しており、しかも登録者の4割以上の人がギャンブルを理由とする内容だったとのことです。

これまで表に出ていなかっただけで、いかにギャンブル目的で借入れする人が多いかということがわかる数値だと思われます。

 

【貸付自粛制度の限界】

この貸付自粛制度の趣旨を簡単に言ってしまえば、「どうか私に貸さないようにして下さい」と信用情報にメッセージを付けておくというだけのことです。

つまり自分自身で、誘惑に弱く、借金癖があることを充分自覚している人が、退路を断つような意味で利用する制度です。
(中には、親族などから強引に申告させられた人もいると思いますが・・)

また、貸付自粛が出ていれば、金融業者は、慣習的にも融資は控えますが、あくまで、自粛を促すだけで、強制力があるものではありません。

そして、申告から3ヶ月が経過すれば、原則、いつでも自分で解除することも可能な制度です。

このように、貸付自粛制度は、一定の足かせにはなると思いますが、完全に貸付けを防ぐことは不可能です。

果たして、この程度の制度で「ギャンブル依存症対策」に意味をなすのかどうか疑問は残るところではあります。

※参考

日本貸金業協会の貸付自粛制度

全国銀行個人信用情報センターの貸付自粛制度

投稿者プロフィール

MiyakeSeiya
MiyakeSeiya編集者・ライター
主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。

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