2019年3月3日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」では、「弁護士のお仕事スペシャル」という企画で、番組の後半では、「過払い金返還請求」について取り上げていました。
ちなみに、この番組はパネリストの文化人や評論家が歯に衣着せぬ物言いで、政治、経済、社会問題などについて徹底討論するバラエティー番組で、関西エリアではかなり有名です。
(残念ながら関東では放送していないので、筆者もたまにしか見る機会はありません。)
今回、パネリストには、嵩原安三郎、萩谷麻衣子、菅野朋子、本村健太郎というテレビでお馴染みの弁護士と、ゲストには、牛島信弁護士(企業法務の専門家)、紀藤正樹弁護士(消費者問題の専門家)といった顔ぶれでした。
そこで今回は、かつて消費者金融での勤務経験があり、実際、現場で過払い案件の交渉もしたことがある筆者が、有名弁護士の発言について、生意気にも、補足、解説をしてみたいと思います。
もちろん、ここでの補足、解説は、完全に筆者の主観によるものなので悪しからず。
【あの有名弁護士も過払い案件は扱っていた!】
あの本村弁護士からは、過払い金返還請求の仕事は「たくさんやってきた」という発言がありました。
また、萩谷弁護士ですら、「年代的にクレサラ事案は、やらざるを得なかった」という趣旨の話をしていました。
クレサラ問題が社会問題化した時代背景や、多重債務者救済という大義もあり、依頼があれば対応せざるを得なかったということでした。
誤解を恐れずに言えば、クレサラ関連の仕事は、有識者からは、いわゆる「汚れ仕事」に見られがちなので、やっていたとしても、あまりハッキリ言いたがらない弁護士が多いと思います。
本村弁護士のように、テレビで、「たくさんやってきた」とは、なかなか言えるものではありません。
過払い金返還請求には、多重債務者救済という面があるので、時代的に対応せざるを得ないというのは理解できます。
【恥も外聞もない!?】
時代的に対応せざるを得なかった弁護士らはともかく、過払い金返還請求をビジネスとして、それに特化してテレビCMで積極的に集客している弁護士法人(ア〇〇ーレ法律事務所を指しているのは明らか)に対しては、有名弁護士やパネリスト達は、「恥も外聞もない!」と蔑んでいる様子がうかがえました。
実際、紀藤正樹弁護士からは、
「この問題は、もともと日弁連の消費者問題対策委員会が1980年代にできた時から取り組んでいて、大阪の木村先生や東京の宇都宮先生などの先人が大変な努力の結果、勝ち取った判決にタダ乗りして儲けている。」
という趣旨の辛辣な発言もありました。
竹田恒泰氏に関しては、「悪徳業者が儲けたものを、〇〇〇(ピー音)が、取っているだけ!」
とまで言い切っていました。
また、それが儲かっていることも、腑に落ちないところだと思います。
かつて(平成29年10月11日)、アディーレ法律事務所が東京弁護士会から2カ月間の業務停止処分を受けた背景には、法曹界のこのような心情が影響したとも言われています。
(参考記事:アディーレ法律事務所が2カ月間の業務停止に!)
【過払い金は訴訟をした方が多く取り戻せる!?】
「過払い金返還請求は安易に業者と和解をせず、訴訟を起こした方が多く取り戻せる!」
というのは、有名弁護士のおおよそ一致した見解でした。
しかし、訴訟をすると、時間も労力もかかるので、広告をたくさん出して、過払い金返還請求に特化した弁護士は、簡単に消費者金融と任意で和解しているということでした。
取り戻せる金額は少なくても、その方が時給換算して利益が大きく効率的だからです。
ちなみに、紀藤正樹弁護士は、携わった過払い金返還請求に関しては、全件、訴訟をしてきたということでした。
かたや、パネリストの須田慎一郎氏からは、
「訴訟と和解はどちらが多く取り戻せるかはケースバイケース。資金が潤沢な消費者金融会社は払うことができるが、資金力がない中小消費者金融は払えない。」
という発言もありました。
和解内容も定型のパターンの流れ作業なので、1件、1件、粘り強く交渉していくという印象はありません。
しかし、筆者は必ずしも、訴訟が善で、和解が悪とは考えていません。
お客さんの中には、長々時間をかけて訴訟をするよりも、取り戻せる金額が少なくても、早期の和解解決を希望している人もいます。
また、訴訟を起こして判決が確定しても、資金力に乏しい中小消費者金融からは満額回収することはなかなか困難です。
実際、過払い金返還請求に関しては、開き直っている業者も多く、
「無い袖は振れぬ!」
「訴訟でも何でもお好きにどうぞ!」
という会社も少なくありません。
そのような業者は、資金も速やかに移動させていますし、ろくな強制執行先もなく、結局、判決はとったけれど、過払い金を回収できないというケースも珍しくありません。
中小消費者金融は過払い金返還請求で廃業に追い込まれた会社も多く、したたかに交渉しないと、生き残っていくことはできません。
そのため、このような、「瀬戸際外交」の会社も少なくありません。
現実的には、消費者金融と折り合いをつけて、妥当な金額で和解することも必要なことかもしれません。
この辺りは、須田慎一郎氏の発言が、的を得ているようにも思えました。
(参考記事:中小消費者金融の過払い返還の実態)
【まとめ】
番組を見て改めて思いましたが、弁護士によって、過払い金返還請求や債務整理に対するスタンスはかなり違います。
紀藤正樹弁護士のように、正義感が強い弁護士もいれば、ビジネスライクな弁護士もいます。
しかし、必ずしも、正義感の強い弁護士が善で、ビジネスライクな弁護士が悪ということではありません。
正義感が強くても、その事務所の方針が、依頼者の意志に沿わないこともあります。
過払い金返還請求や債務整理を、弁護士、司法書士などに依頼するときは、ヒアリングが実施されるはずですが、その際、その事務所の考え方が自分に合っているのか見極めることが必要です。
そこで違和感があれば、他の事務所を選択するのも方法でしょう。
自分自身の希望に沿った事務所に依頼することが重要です。
(参考記事:債務整理に対する各事務所の方針の違い)
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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