現在、新型コロナウイルス感染症の影響によって、日本経済が大きく落ち込んでいます。
そのような中、不況に強いといわれていたキャッシング業界はどうなっているのでしょうか。
今回、2020年度4月度、5月度の各社の月次データをもとに探ってみました。
1日も早い終息を祈っています。
【消費者金融の申込みは大幅に減少】
消費者金融は、ここ数年、新規顧客の獲得が好調で、順調に貸付残高を伸ばしていましたが、2020年4月、5月と、大手を中心に、新規貸付けが激減しています。
以下は、大手3社の月次データから、新規獲得件数、新規申込み件数、承認率をピックアップした数値です。
これら月次データによると、特に5月度の落ち込みは、各社軒並み前年の40%~60%ほどで、消費者の資金需要が大きく衰退していることがわかります。
このような大幅な落ち込みについては、ある消費者金融会社は、「外出自粛により、レジャー等の利用機会がなくなったことによる借控え」だと分析しています。
新型コロナウイルス感染症の影響によって、商業施設は休業を強いられ、個人事業主の収入は減り、商業施設で働いていたパートやアルバイトの収入も失われたといわれています。
本来、事業者も個人消費者も資金繰りが厳しくなれば、資金需要が高まってもよいのですが、むしろ消費者のマインドは逆に働いているようです。
また、承認率も前年に比べ軒並み下がってきていることからも、各社コロナ禍の中での融資に対して、慎重になっているのだと思われます。
もちろん経済活動の回復に伴い、資金需要も戻ってくるものと予想されますが、この記事を執筆している2020年7月4日現在、東京では、3日連続、100人超えの感染者がでるなど、完全な終息となるのは、まだまだ先のこととなりそうです。
【不良債権の増加が懸念される】
また、いずれ経済活動の復活に比例して、各社の融資残高は回復してくるとしても、業界の不良債リスクの膨張は中長期的な課題になりそうだといわれています。
仮に、パートやアルバイトが2カ月間無収入になったとしたら、年間の所得は16.7%失われたことになります。
これを残り10カ月で取り戻すには、1カ月の賃金が2割上がらなくてはならないということになります。
また、事業者の収入も営業を再開すればすぐに取り戻せるわけではありません。
特に、飲食店などは、感染防止の観点から席数に制限を減らす動きもあり、失われた収入を取り戻すことは非常に困難です。
その結果、今後、消費者金融業界では、延滞、リスケ、債務整理などが増加することが予想されています。
また、失われた収入を補填するために、過払い金返還請求案件が増加するとの声も聞かれます。
【クレジットカードショッピングの動向は】
このような傾向が見られるのは、キャッシング業界に限ったことではなく、クレジットカードなどのショッピングも同様に落ち込んでいます。
しかし、こちらに関しては、やや回復の兆しも見えてきています。
JCBとナウキャストが提供している、国内消費動向指数「JCB消費NOW」のデータによると、消費全般を捉えた総合消費指数の1月後半からの変化率は、4月後半は33.3%減と大きく落ち込んでいましたが、5月上旬は30.7%減と、5月下旬は21.7%減まで回復しており、両社は、「百貨店、喫茶店・カフェ、居酒屋、ファミレスなどの外出型消費は大きく下げ幅を縮小し、回復の兆しが確認できた」と分析しています。
JCB消費NOWは政府統計の先行指標ともいえるので、今後、政府統計でも、小売りやサービス業の売り上げが回復傾向をたどりはじめたことが明らかになれば、消費者の消費マインドも高まり、カードショッピング売り上げも回復に転じる可能性もあります。
(月間消費者信用2020年7月より一部抜粋)
投稿者プロフィール

- 金融専門記者
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自らもかつて貸金業に従事。その経験を活かして現在は金融情報専門のライターとして精力的に活動中。幅広い人脈を活用した情報取集力には定評がある。
当サイトを含め多数のサイトで執筆を担当。
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