民法改正でカードローンの何が変わるのか!

2020年4月1に、約120年ぶりとなる民法大改正があったことはご存知でしょうか。
しかし、民法改正と言っても、あまりピンときていない方も多いと思います。
実際、この改正によってカードローンの利用はどう変わるのでしょうか。

ここでは、2019年10月、11月に開催された、日本貸金業協会の主催するコンプライアンス研修会の資料をもとに、改正民法について詳しく説明しています。
尚、一般の方にも、法改正のエッセンスが、わかりやすく伝わるよう、細かな箇所は端折って、あえてザックリ解説させて頂きました。
是非、参考にして下さい。

 

【なぜ民法が改正されたのか】

実は、これまで民法のうち、契約などを定めた債権関係の規定は、明治29年に制定されて以降、ほとんど改正がされていませんでした。

しかし、明治時代と現代とでは、我々をとりまく環境は大きく変化しています。
例えば、明治時代には、「ネット取引」など予想もつかなかったはずです。
普通に考えて明治時代に決めたルールを、そのまま現代に適用してゆくのは無理があります。
このため、今回の民法改正では、取引社会の基本である、「契約に関する規定」を中心に、現代の社会、経済に対応すべく、現状にそぐわない部分の改正が行われたというわけです。

では、次からは、実際にカードローンの利用がどのように変わってゆくのかを解説していきます。

 

【お金の交付がなくても契約は成立することになった】

「お金を借りる」という契約は、旧民法のルールでは、例え、契約書を取り交わしていても実際にお金を貸すまで契約は成立しないとされていましたが(要物契約)、改正民法では、実際にお金を貸していなくても、申込みと承諾があれば、契約は成立することとなりました。(諾成契約)
このため、一旦、契約すれば、カードローン社は「お金を貸す義務」を負うことになりますし、借主には「借りる権利」が発生することになります。

それでは一旦、契約をしたらカードローン会社は、何があっても絶対に融資をしないといけないということになるのでしょうか。結論から言えば、カードローン各社は、契約約款に特約を設けるなどして、これまで通り、契約にはお金の交付を伴うとする会社がほとんどなので、実際にお金を借りる権利を主張することはなかなか困難でしょう。
そのため、この変更箇所については、利用者は特に気にする必要はありません。

【ネットで周知させれば契約約款の変更が可能となった】

改正民法では、契約約款の内容の変更について、ネットに掲示するなどの手段で、柔軟に対応できるようになっています。
具体的には、次のような条件に該当する場合は、カードローン会社の公式HP上で公表するなど、期間を定めて周知すれば、わざわざ書面の取り交わしをしなくてもよいことになりました。

①約款の変更が顧客の利益に適合するとき
②変更の内容が取引の目的に反せず、変更の必要性、変更後の内容の相当性、その他の事情に照らして合理的であるとき
例えば、「金利を引き下げする」、「返済期間を猶予する」など、顧客の利益になる変更や、ATMや店舗閉鎖に伴う返済手段の変更など、やむを得ないものがこれにあたります。
もちろん契約した後に、カードローン会社が、お客に不利益な約款を、やたら付け足すことは出来ません。

【保証契約が大幅に変更された】

改正民法では、保証契約について大幅な変更がありました。
その主な内容は、以下のようになっています。

①保証人に対する情報提供義務

保証人から請求があれば、カードローン会社は、主債務者の、元本、利息、損害賠償、その他、従たる借入れについての不履行の有無、残額、及び返済が遅れているものの借入れ額を遅滞なく知らせなければならなくなりました。

要するに、保証人に主債務者の返済状況を、より明確に伝えることになったということです。

②期限の利益喪失時の情報提供義務

主債務者が返済を滞るなどして、全額一括請求(期限の利益喪失)されたときは、カードローン会社は2カ月以内に、保証人にそのことを通知しなければならなくなりました。
(その通知をしなければ、保証人に通知をするまで、遅延損害金は請求できなくなりました。)

要するに、保証人が知らないうちに、多額の遅延損害金が計上されることがなくなったということです。

③契約締結時の情報提供義務

事業目的ローンの保証人に個人がなる場合、主債務者は、保証人に対して、主債務者の財産や収支、債務の状況、担保として提供できるものがあるかなどを説明しなければならなくなった。
(この説明をしていなかったり、嘘の説明をしていた場合、保証人は保証契約を取り消すことが出来るようになりました。)
事業目的ローンは多額となるケースが多く、その会社の経営状況などをきちんと理解したうえでなるべきということです。

④公正証書の作成義務

事業目的ローンの保証人に、その事業に深く関わっている者(理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する者、個人事業主の場合は共同経営者や配偶者)以外の者がなる場合は、公正証書の作成が必要となった。
事業目的ローンは多額となるケースが多く、より慎重に、公証人という第三者、立会いのもとでなるべきということです。

⑤極度額の設定義務

個人が保証人となる場合は、保証人が責任を負うべき、上限金額(極度額)の設定が必要となった。
(賃貸借契約などより広い範囲に適用されるようになった。)
カードローン契約では、従前より既に、極度額を定めているので、このことで特になんら変化はありません。

 

【消滅時効の期間がシンプルに統一された】

旧民法では時効に関して、権利を行使できるときから10年と定めていたものの、例えば、
飲み屋のツケは1年、工事の請負代金は3年、商取引は5年、などの例外を設けていました。
そのため改正民法では、

・権利を行使することができることを知ったときから5年
・権利を行使することができるときから10年

と、シンプルに統一されました。
カードローンでは、通常、当事者が権利を行使できることを知っているので、これまで通り、時効は、最終支払い期日から5年(裁判で判決が出ている場合は10年)で、何ら変化はありません。

 

【法定利率が引き下げられた】

旧民法では、民事法定利率(5%)と、商事法定利率(6%)とあったものがなくなり、法定利率(3%)として、引き下げとなりました。
(3年ごとに見直す変動制)
カードローンの金利は、出資法、貸金業法、利息制限法で定められた金利を採用しているので、通常取引にはあまり関係ありません。

(参考)
カードローン上限金利
・元本10万円未満・・年率20.0%
・元本10万円以上100万円未満・・年率18.0%
・元本100万円以上・・年率15.0%
※損害金は全て20.0%

但し、過払い金に対して計上される利率は、これまでの旧民法下では5%でしたが、
・改正民法施行前に発生した過払い金・・5%
・改正民法施行後に発生した過払い金・・3%
となりました。

 

【まとめ】

ここまで、ざっと、改正民法について解説してきましたが、おおよそご理解頂けたでしょうか。
カードローン会社と、無担保無保証で通常取引をしている限りは、これまでと特に何も変わらないことがほとんどなので、特段気にする必要はないでしょう。
また、この改正は、消費者保護に重点をおいているので、利用者が不利益となるような改正はされていないので、安心して下さい。

投稿者プロフィール

MiyakeSeiya
MiyakeSeiya編集者・ライター
主にサイトの編集を担当するが、記事の執筆も行う。某銀行に勤務していたが脱サラ。金融関連の出版社との馴染みが深く、金融業界の知識も豊富。

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